開催御礼

新しい生活様式の中での開催となったウォールアートフェスティバルふくしまin猪苗代2020。観客を会場校の児童生徒に限定しながらも、3校での滞在制作、5校でのワークショップを繰り広げるなど、過去最大規模での芸術祭を実施することができました。
 物置きと化していた猪苗代高校の美術室は、香川大介さんが圧倒的なスケールで描いた「目をとじて この世界は 感じるままに」によって見事な再生を遂げました。翁島小学校の一番小さな教室には、児童らの湖を守る活動から着想を得た浅野友理子さんが「植物は巡る」を描き、いのちの循環が表現されました。東中学校のホールの2本の柱に市橋晴菜さんによって吹き込まれた「生命の木」が誕生すると、子どもたちとのワークショップで描かれた木々も茂り、未来への希望の種が宿りました。3人のアーティストによって奇しくも表現された、「再生」「循環」「誕生」の世界は、今の時代だからこそ胸に迫るメッセージとなり、子どもたちの心にも自然と響いたように思います。
 今回は、「対話」をテーマとして掲げ、オンライン配信による制作過程の紹介や、制作中のインタビュー、完成後のトークセッションなど、アーティストと対話する機会をちりばめました。また、はじまりの美術館で行った招聘アーティストによるワークショップは、アートを通して自分自身と対話する機会ともなりました。まさに、私たちが信じたアートの力、そしてウォールアートフェスティバルによって生まれた対話が、立ち止まざるを得なかった私たちに様々なものを気づかせ、次へ進むエネルギーを与えてくれたように感じます。
 全身全霊をかけて作品を生み出した招聘アーティストの香川大介さん、浅野友理子さん、市橋晴菜さん。当日のワークショップを盛り上げてくれた淺井裕介さん、野口勝宏さん、ツツミエミコさん。プロジェクトを受け入れていただいた猪苗代高校、東中学校、翁島小学校、長瀬小学校、緑小学校の学校関係者の方々。観客にとどまらず、制作の場にも入ってくれた子どもたち。そしてこのプロジェクトを見守っていただきましたすべての方々に心より感謝いたします。ありがとうございました。
作品を公開する日が、一日でも早く来ることを願って。
       2020年11月4日 実行委員長 楠 恭信