ウォールアートフェスティバル(WAF)について

2010年にインド、ビハール州にて農村地帯の学校を舞台にした芸術祭「ウォールアートフェスティバル」を開催。以来、マハラシュトラ州、ラダック地方などで毎年アートを媒介にした教育支援やインフラの整備、地元の子どもたちの創造性やアイデンティティを育むことを目指す芸術祭を開催している。NPO法人ウォールアートプロジェクトが主催。

ウォールアートフェスティバルふくしまin猪苗代

2016 年、猪苗代にインドのワルリ画家たちが滞在制作し、「猪苗代のワルリ画」を描いたプロローグ。2018年には、猪苗代町立翁島小学校・吾妻中学校、県立猪苗代高校の3校の壁にアーティストたちが渾身の作品を描いた。2019年は、あと3年で取り壊される猪苗代中学校の教室に描かれ、町内各地にアート作品が展開された。そして2020年は、コロナ禍で制約が多い中、学校と地域とアーティスト、それぞれの力が集約する形で、翁島小学校、東中学校、猪苗代高校学校での滞在制作が実現した。ウォールアートフェスティバルふくしまin猪苗代は、「アート×学校×地域」により子どもたちの感性を育みながら、想像と創造の熱を猪苗代から発信する芸術祭。猪苗代町民で作る実行委員会が主催し、町教育委員会、NPO法人ウォールアートプロジェクト、(一社)猪苗代青年会議所、(社福)安積愛育園はじまりの美術館の共催で実施。

ウォールアートフェスティバルふくしまin猪苗代2020開催御礼

楠 恭信
WAF in 猪苗代 実行委員長

 

新しい生活様式の中での開催となったウォールアートフェスティバルふくしまin猪苗代2020。観客を会場校の児童生徒に限定しながらも、3校での滞在制作、5校でのワークショップを繰り広げるなど、過去最大規模での芸術祭を実施することができました。

 物置きと化していた猪苗代高校の美術室は、香川大介さんが圧倒的なスケールで描いた「目をとじて この世界は 感じるままに」によって見事な再生を遂げました。翁島小学校の一番小さな教室には、児童らの湖を守る活動から着想を得た浅野友理子さんが「植物は巡る」を描き、いのちの循環が表現されました。東中学校のホールの2本の柱に、市橋晴菜さんによって吹き込まれた「生命の木」が誕生すると、子どもたちとのワークショップで描かれた木々も茂り、未来への希望の種が宿りました。3人のアーティストによって奇しくも表現された、「再生」「循環」「誕生」の世界は、今の時代だからこそ胸に迫るメッセージとなり、子どもたちの心にも自然と響いたように思います。

 今回は、「対話」をテーマとして掲げ、オンライン配信による制作過程の紹介や、制作中のインタビュー、完成後のトークセッションなど、アーティストと対話する機会をちりばめました。また、はじまりの美術館で行った招聘アーティストによるワークショップは、アートを通して自分自身と対話する機会ともなりました。まさに、私たちが信じたアートの力、そしてウォールアートフェスティバルによって生まれた対話が、立ち止まざるを得なかった私たちに様々なものを気づかせ、次へ進むエネルギーを与えてくれたように感じます。

 全身全霊をかけて作品を生み出した招聘アーティストの香川大介さん、浅野友理子さん、市橋晴菜さん。当日のワークショップを盛り上げてくれた淺井裕介さん、野口勝宏さん、ツツミエミコさん。プロジェクトを受け入れていただいた猪苗代高校、東中学校、翁島小学校、長瀬小学校、緑小学校の学校関係者の方々。観客にとどまらず、制作の場にも入ってくれた子どもたち。そしてこのプロジェクトを見守っていただきましたすべての方々に心より感謝いたします。ありがとうございました。

作品を公開する日が、一日でも早く来ることを願って。

Facebook.

WAF2020 ご協力者の方々からご挨拶

宇南山 忠明 様

猪苗代町教育委員会教育長

 

ウォールアートフェスティバルふくしまin猪苗代」に期待するもの

 

ウォールアートフェスティバルふくしまin猪苗代2020が、3名の素晴らしいアーティストにより、本町で新たな作品が完成し開催できましたこと、大変喜ばしく誠におめでとうございました。

 今年は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、全国各地の様々なイベントが中止となり、本町も大きなイベントが中止を余儀なくされる中、ウォールアートフェスティバルが、開催できるかどうか本当に心配しておりました。

長期化するコロナ禍の中、楠実行委員長はじめ実行委員の皆様の、この事業にかける厚い思いと、アーティストの心が一つとなり、今年は、一般公開は行わず、オンライン配信により開催できましたこと本当に嬉しく思います。

 これまでに、町内の小・中学校と高校を会場に、アーティストと児童生徒や地域の方々が協働で表現した作品は、児童生徒の感性を育むとともに、多くの方々との交流を通して、新しい学びの機会となるなど、アートの力で地域の交流に大きく貢献されておりますことに、深く敬意を表しますとともに心から感謝申し上げます。

これからも、この事業を通して町内の学校が、地域の交流の場となることを、ご期待申し上げますとともに、実行委員会の益々の発展と、皆様のご健勝とご活躍をご祈念申し上げあいさつといたします。

永島 慶和 様

猪苗代町立翁島小学校長

 

答え

 

3年連続の制作会場となった本校は、ウォールアートの「宝庫」です。
インドとここだけ、世界に2つ存在する、小栗千隼氏による「ワイルドローズ」
岩切章悟氏による、世界一ファンキーな図工室「きみの見る世界のはじまり」
泥の跡と淺井裕介氏のコラボ、摩訶不思議な世界「風といのちと大地のカケラ」
今なお、どの作品もじんわりと熱を帯びて、貴重な教育資源として機能しています。

 3年目は、「この部屋が、水槽に見えてきました。」とチャーミングな発想をつぶやいた、浅野友理子氏を迎えました。最大の恩恵は、浅野さんが描く絵によって、本校独自の「水環境学習」への賛辞が贈られたことです。伝統的に行ってきた環境保全活動が、作家のフィルターをとおして、具体的な形として現れてきました。

 あの「水槽」の中に入り、鑑賞者である子どもたちが壁画と向き合うことで、絵全体が完成すると、浅野さんは語ります。活動の主役である子どもたちが絵と「対話」することによって、この絵も成長していくことでしょう。

 子どもたちに誇りと自信を与えてくれた作品は、子どもたちに溶け込みながら、あるべき場所に存在し続けます。

 なぜ、WAFを学校で開催するのか?

 その答えは、明白なのです。

津金 光彦 様

猪苗代町立東中学校長

 

「生命の木」から未来へ

 

 WAFふくしまin猪苗代の滞在制作を受け入れるきっかけとなったのは、東中が令和四年に統合することでした。東中が閉校しても、作品が子どもたちの心の中に生き続け、そして地域の宝物として未来に受け継がれれば、という思いがありました。

 制作期間約3週間余り。校地内にある土や自然の素材を生かした制作により、作品である「生命の木」は、日々命を与えられ、その表情が毎日変化し、驚くべき成長を果たしました。果たして「誕生日」当日、「生命の木」は、東中全体にその満ちあふれるエネルギーを放出し、見る者すべてに生きる喜びと癒しをもたらしました。

不思議なことに「生命の木」は、毎日成長し続けています。なぜなら、「生命の木」には、「新型コロナ禍だからこそ、多くのストレスを抱え、我慢和を強いられている生徒たちをアートの持つ力で元気づけ、励ましたい」という実行委員の皆さんの思いと、「閉校後の行く末に思いを巡らす機会を創出し、みんなに愛される作品を残したい」というアーティストの市橋晴菜さんの思いが生き続けているからだと思います。

 日々、笑顔で、かつ全身全霊で制作に当たられた市橋さんの祈りにも似た姿に、生徒・教職員一同、たくさんの「気づき」と「学び」を得ることができました。

未来に向かって成長し続ける「生命の木」は、時代や世代を越えて受け継がれるものであると確信しています。

最後になりましたが、WAFのますますのご発展と実行委員の皆様、プロジェクト代表のおおくにあきこさん、ディレクターの浜尾和徳さん、アーティストの市橋晴菜さんのますますのご活躍を申し上げます。

素晴らしい「出会い」に感謝しています。ありがとうございました。

佐々木 理夫 様

猪苗代高等学校長

 

「ウォールアートフェスティバルふくしまin猪苗代2020」に寄せて

 

コロナ禍の中、「ウォールアートフェスティバルふくしまin猪苗代2020」を無事に成し遂げられた楠実行委員長はじめ実行委員の皆様、おめでとうございます。今年度もウォールアートフェスティバル(以下WAF)参加させていただいたことに心より感謝申し上げます。

本校はWAFに数年前から参加させていただいており、3階の観光実践室と廊下には、本校同窓生でもある写真家の野口勝宏さんの巨大な「花アート」、松岡亮さんの9mにも及ぶ「Play Pray paint」が飾られております。本校は古い校舎でありますので、造りは実用を旨とし無機質・簡素なものでありますが、2作品の放つ気のおかげで展示スペースは刺激的かつ癒しの空間となっております。今年度は香川大介さんに来校いただき、美術室をまるごとアート空間としていただきました。本校では美術の授業がないため美術室は騒然とした状態でありましたが、香川さんや実行委員の方々による片付けと清掃を経て、生徒・教職員も作品制作のお手伝いをさせていただきアート作品「目をとじて この世界は感じるままに」が誕生しました。四方の壁に四季がイメージされた繊細かつダイナミックな作品であります。完成した芸術作品を拝見することはあっても、制作過程を体験することは稀なことであり、日々室内が変わっていく様は「感動」の一言でありました。生徒にとっても、WAFは「リアルな芸術体験」として一生の思い出となることと思っております。コロナ禍により、オンラインやVRといった画面越し、疑似的な体験が多くなりましたが、「リアルな体験」がもたらす圧倒的な迫力・インパクトの大切さ・すばらしさを再確認する機会ともなりました。今後とも本校をWAF活動の場としていただきたいと思っております。